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相続時精算課税制度と暦年課税の改正ポイント

執筆者の写真: T.Y.consultingfirm
T.Y.consultingfirm
22 時間前
読了時間: 5分

はじめに

親や祖父母から子や孫へ財産を渡す「生前贈与」。そのルールが2024年1月から大きく変わりました。ポイントは、「相続時精算課税」が使いやすくなった一方で、昔ながらの「暦年贈与」は相続税の節税効果が小さくなったといわれます。この記事では、2つの制度の改正内容を、できるだけやさしい言葉で整理します。


ポイント① そもそも2つの制度とは?

贈与税のかけ方には2つのコースがあり、どちらかを選びます。

●   暦年課税(れきねんかぜい):1月〜12月の1年間にもらった額から110万円を差し引き、残りに贈与税がかかる昔からの方法。何も届け出なければこちらになります。

●   相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい):60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べる方法。累計2,500万円までは贈与税がかからず、超えた分は一律20%。その代わり、贈与した財産は相続のときに相続財産に足し戻して相続税を計算し直します(=「精算」)。


ポイント② 相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」ができた

2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税にも毎年110万円の基礎控除が設けられました。これが今回いちばん大きな改正です。

●   年110万円以下なら贈与税の申告がいらない。(以前は1円でも申告が必要でした)

●   110万円以下の部分は、相続のときに足し戻さなくてよい。つまり、相続税の対象から完全に外れます。

●   110万円は、累計2,500万円の特別控除とは別枠。まず110万円を差し引き、残りを2,500万円の枠から使います。

●   110万円はもらう人(子・孫)ごとの枠です。父と母の両方から精算課税で受け取る場合は、110万円を贈与額の割合で分け合います。

●   注意:制度を使い始めるときは、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ出す必要があります(110万円以下で申告不要の年でも、届出は必要です)。


ポイント③ 災害で土地・建物が被害を受けたら評価を見直せる

相続時精算課税で贈与された土地や建物が、相続税の申告期限までに災害で一定以上の被害を受けた場合、被害額を差し引いた金額で相続財産に足し戻せるようになりました(2024年1月1日以降に災害を受けた場合)。


ポイント④ 暦年贈与は「相続前3年→7年」の足し戻しに

暦年贈与では、亡くなる直前の贈与は相続財産に足し戻して相続税を計算するルールがあります。この期間が、これまでの3年から7年に延びました(2024年1月1日以降の贈与から対象)。

●   延びた4年分(相続開始前4〜7年前)の贈与については、合計100万円までは足し戻さなくてよいことになっています。

●   一気に7年になるわけではなく、段階的に延びていきます。


亡くなった時期

足し戻す贈与の期間

2026年12月31日まで

相続開始前3年以内(従来どおり)

2027年1月1日〜2030年12月31日

2024年1月1日から相続開始日まで(3年超〜7年未満)

2031年1月1日以降

相続開始前7年以内


2027年からは、足し戻しの対象期間が毎年少しずつ長くなっていきます。「亡くなる直前にまとめて贈与」という対策は、これまで以上に効果が出にくくなります。

ポイント⑤ 改正後の2つの制度を比べると

項目

暦年課税

相続時精算課税

使える人

誰でも(制限なし)

60歳以上の父母・祖父母 → 18歳以上の子・孫

毎年の非課税枠

年110万円(もらう人ごと)

年110万円(もらう人ごと)+累計2,500万円

枠を超えた分の税率

10%〜55%(超過累進)

一律20%

相続時の足し戻し

相続前7年以内の贈与(段階的に延長)

110万円を超えた部分は期間に関係なくすべて

110万円以下の贈与

相続前7年以内なら足し戻し対象

足し戻し不要

届出

不要

必要(選択届出書)

途中変更

精算課税へ変更できる

一度選ぶと同じ贈与者からは暦年に戻れない


ポイント⑥ どちらを選ぶ?考え方の目安

相続時精算課税が向きやすいケース

●   相続税がかからない、またはかかっても少ない見込みの人(2,500万円の枠を使って早めにまとまった財産を渡せる)

●   毎年110万円以内をコツコツ贈与したい人(足し戻しがなく、申告の手間もない)

●   高齢の親から贈与したい人(暦年贈与だと7年の足し戻しにかかりやすい)

●   今後値上がりが見込まれる財産・収益を生む財産(アパートなど)を渡したい人(相続時は贈与したときの価額で計算されるため)

暦年課税が向きやすいケース

●   相続税がしっかりかかる見込みで、贈与する側がまだ若く、長い期間をかけて贈与できる人

●   孫や子の配偶者など、相続人ではない人へ贈与したい人(原則として足し戻しの対象外)

●   110万円を少し超える額を毎年渡し、低い税率(10%〜15%)の贈与税を払ってでも相続財産を減らしたい人


ポイント⑦ 相続時精算課税の注意点

●   一度選んだら取り消せない:同じ親(祖父母)からの贈与は、ずっと精算課税になります。

●   値下がりのリスク:相続時は「贈与したときの価額」で足し戻すため、その後に値下がりしても評価は下がりません(災害時の特例を除く)。

●   土地の特例が使えない:精算課税で贈与した土地には、相続税の「小規模宅地等の特例」(評価額を最大80%減らせる制度)が使えません。

●   不動産は諸費用が割高:贈与で不動産を受け取ると、相続で受け取るより登録免許税が高く、不動産取得税もかかります。


あわせて知っておきたい最近の動き

●   住宅取得等資金の贈与の非課税特例(最大1,000万円)は、2026年12月31日までの贈与が対象です。

●   教育資金の一括贈与の非課税措置は、2026年3月31日で終了しました。

●   結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置は、2027年3月31日まで延長されています。

●   令和8年度税制改正では、貸付用不動産や不動産小口化商品の相続税評価の見直し(2027年1月1日以降の相続等が対象の予定)が示されています。不動産を使った対策を検討中の方は注意が必要です。


まとめ

●   相続時精算課税は「年110万円まで申告不要・足し戻しなし」となり、ぐっと使いやすくなりました。

●   暦年贈与は足し戻し期間が7年に延び、相続直前の贈与による節税効果は小さくなっています。

●   どちらが有利かは、財産の額・種類、贈与する人の年齢、渡したい相手によって変わります。

●   精算課税は一度選ぶと戻れないため、試算をしたうえで、早めに検討を始めることが大切です。


※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料にもとづく一般的な解説です。個別の状況によって取扱いが異なる場合がありますので、実際の判断にあたっては税理士等の専門家にご相談ください。

 
 
 

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